第35回・東京国際映画祭 試写作品
2022年10月24日から11月2日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区の会場で開催された「第35回 東京国際映画祭」。初の会場となる東京宝塚劇場でオープニングセレモニーが行われ、レッドカーペットも復活しました。上映本数も昨年の86本から大幅に増加し、今年は110本上映されました。その中から今回試写鑑賞したものをご紹介します。

『マンティコア Manticore 』 ーコンペティション作品ー

主人公フリアンは、ゲームに登場するモンスターのキャラクターデザイナーとして成功を収めていた。自宅で仕事中に隣の家で火事がおこり、一人で留守番をしていた男の子を助けた後、フリアンは度々精神的に不安定なことが起こるようになる。そんなある日、パーティ会場でボーイッシュな少女ディアナと出会い、幸せな時間を過ごすようになるが、ちょっとしたきっかけで予期せぬ展開に巻き込まれていく。。
それぞれの思惑が交差してどこまでも堕ちていく怖さを感じました。
※題名のマンティコアとは、頭が人間で体がライオンという想像上の怪物のこと。
監督/脚本:カルロス・ベルムト
プロデューサー:ペドロ・エルナンデス・サントス
撮影監督:アラメ・メヒーア・ゴンサレス
キャスト:ナチョ・サンチェス、ゾーイ・ステイン ほか
2022年・スペイン・116分
『ファビュラスな人たち The Fabulous Ones 』 ーコンペティション作品ー

30年前に亡くなった友人「アントニオ」の手紙が見つかったことを発端に、彼女の意思を叶えるため昔馴染みのトランスジェンダーの女性5人が思い出のヴィラに集まった。歳をとってもキュートでおしゃれな彼女たちは、集まると昔話に花が咲く。しかしその思い出は、幸せな記憶とはいえないものばかりだった。。
カラフルな衣装や艶やかなメイクが、物語とは相反して彼女たちの生き方を映しているように見えます。
監督/脚本/編集:ロベルタ・トッレ
脚本:クリスチャン・セレソリ
監督:ステファノ・サレンメ
キャスト:ポルポラ・マルカシャーノ、ニコル・デ・レオ、ソフィア・メイエル、ヴェート・サンデー、ミツィア・チェリーニ ほか
2022年・伊・74分
『母性 Motherhood 』 ーガラセレクション作品ー

湊かなえ原作、廣木隆一監督作品。
母(祖母)の愛に守られて育った娘を愛せない「母」と、母親から愛されたい「娘」、二人のそれぞれの視点から語られるストーリー。そこから明らかになる真実とは。衝撃のラストに注目です。
原作:湊かなえ
監督:廣木隆一
脚本:堀泉 杏
主題歌:JUJU
キャスト:戸田恵梨香、永野芽郁、大地真央、高畑淳子 ほか
2022年・日・116分
『エゴイスト Egoist 』 ーコンペティション作品ー

©︎2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
ゲイである主人公の浩輔は、東京の出版社で編集者として働き、同じくゲイの友人たちと自由気ままに過ごしている。そんなある日、シングルマザーの母を支えながら、パーソナルトレーナーとして働く龍太と出会い、互いに惹かれ合い満ち足りた時間を重ねていくようになる。しかし、ふたりでドライブに出かける約束をしていた日、龍太は姿を現さなかった。。。
生きている生々しさの中で、お互いを思う穏やかな気持ちが心を震わせる作品です。
監督/脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
原作:高山真
キャスト:鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子 ほか
2022年・日・120分
『鬼火 Will o' the Wisp 』 ーワールドフォーカス作品ー

2069年、王政が復活したポルトガルで、死を間近に控えたアルフレード王がベッドに横たわっている。すると突然、現代(2022年)にスリップしたように世界が切り替わり、若き日のアルフレードが現れる。消防士を養成する学校に入ったアルフレッドは、黒人青年の教官アフォンソと出会い、やがて恋に落ちる。。
ミュージカル風の演出で、青春の情熱がダイナミックに描かれています。
監督/脚本/プロデューサー:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
脚本/美術:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
脚本:パウロ・ロペス・グラサ
撮影監督:ルイ・ポッサス
キャスト:マウロ・コスタ、アンドレ・カブラレ、ジョエル・ブランコ、オセアノ・クルス ほか
『第三次世界大戦 World War Ⅲ 』 ーコンペティション作品ー

第二世界大戦を題材にした映画の撮影で、エキストラになった主人公シャキープは、ヒトラー役の俳優の代役に抜擢され、豪華なセットで寝泊まりすることになる。そこへ、知り合いの女性ラーダンが訪ねてきて匿うことになるが、そのために大きなトラブルに巻き込まれていく。。。 あまりにも衝撃的な結末です。
監督/脚本/編集/プロデューサー:ホウマン・セイエディ
脚本:アリアン・ヴァズィル・ダフタリ
撮影監督:ペイマン・シャドマンファル
キャスト:モーセン・タナバンデ、マーサ・へジャーズィ、ネダ・ジェプレイリ、ナヴィド・ノスラティ
2022年・イラン・107分
『生きる LIVING』 ークロージング作品ー

黒澤明の名作「生きる」が、カズオイシグロの脚本、オリヴァー ハーマナスの監督で、第二次世界大戦後のイギリスを舞台に蘇る。主人公は生真面目でベテラン公務員のウィリアム。毎日決まった時間に決まった電車に乗って、日々変わらぬ仕事をこなす、そんな毎日を送っていた。しかし、余命宣告を受けたことがきっかけで、生きる意味を見つるべく、突然旅に出た。
原作:黒澤明
監督:オリヴァー・ハーマナス
脚本:カズオ・イシグロ
キャスト:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク 他
2022年・英・103分
今回は、7作品鑑賞できましたが、個人的に一番印象に残っている作品はクロージングの「生きる」です。人はどんなに歳を取っても、望めばいつでもどこからでも、思うように変わることができると勇気をもらいました。自分のこれからの人生を考え直す、良い機会になったと思います。
h.kobori
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